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第13号 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科同窓会報

第13号 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科同窓会報を4回に渡り,毎週火曜日に公開していきます.

 

東日本大震災被災地の大学からの報告

東北学院大学工学部環境建設工学科 教授 石 川 雅 美(1981年卒)
 私の勤務先である東北学院大学(創立1886年、多賀城市と仙台市内に2つのキャンパスを持つ学生数12,000人の総合私立大学)では、東日本大震災において、1,800人を上回る数の学生が何らかの形で被災しています。大変残念なことに5名の学生が死亡または行方不明になり、さらに18名の学生が家計維持者を亡くしています。自宅が全壊あるいは半壊した学生は、それぞれ800名近くになります。この他、津波で親の仕事先が流されるなどで失業したり、船が流されるなどして生業を続けたりすることが困難になったケースなど、大きな経済的損失を受けた学生や、福島原子力発電所の避難区域内から避難を余儀なくされている学生などが、あわせて200名ほどいます。もちろん、これらのケースの複数に該当する学生もおり、上記のような被災形態だけで、全学生数の実に15%にもなります。大学としても被災した学生に対して、授業料の免除や緊急給付金の支給など最大限の支援を行っており、その総額は7億円近くにもなります。この支援は、今後4年間継続されることになっています。
 一方、工学部のある多賀城市では、津波によって塩竈市など近隣の港町よりも多い185人を上回る方が亡くなりました。津波は沿岸部からおよそ1.5kmの地点まで押し寄せ、JR仙石線の多賀城駅付近まで到達しました。工学部のキャンパスまでは、直線でおよそ500mほどのところでした。本キャンパスの礼拝堂は地震発生時から3月末まで被災した近隣の方達の避難所となり、一時は300人近くの方が寝泊まりをされていました。本学の職員たちはボランティアとして昼夜を問わず懸命に被災されたた方達のお世話を致しました。本学はキリスト教のミッションスクールであり、キリスト教の教えに基づく助け合いの精神が十分に発揮された場でもありました。
 工学部の建物は、津波の被害はありませんでしたが地震によって大きなダメージを受けました。写真1は教室の黒板が取り付けてあった壁ですが、黒板が落下して仕切り壁の上部のパネルも剥落しています。この教室だけでなく、多くの教室で天井からつり下げてあるプロジェクターやスピーカーなどの機器が落下しました。また写真2に示すような構造壁に「せん断ひび割れ」が多数発生しました。この他、本学の仙台市内にあるキャンパスでもエレベータのレールが変形して使用不能となったり、スロッシングにより貯水槽が破損して長期にわたり水が使えなくなったりなどかなりの不便を強いられましたが、いずれのキャンパスにおいても懸命に補修工事を進め、5月の連休明けから授業を再開することができました。
 最後に今回の震災に関連して私の研究の一例を紹介させて頂きたいと思います。今回の津波で太平洋沿岸を通る国道45号線に架かるいくつかの橋が流出して、救助活動や物資の補給に甚大な支障をきたしました。そこで、将来への対応として津波によって流出しないような設計が求められています。図1は粒子法の一つであるSmoothed Particle Hydrodynamicsという手法を用いて津波によって橋梁にどのような外力が作用するかを検討した例です。解析パラメータの調整など、まだ克服すべき課題はたくさんありますが、東北の復興と将来の防災のためにも精力的に研究を進めていく予定です。

 


社会工学セミナー開催にあたり

 皆様のお陰で、本年12月で第17回目の社会工学セミナーを迎えることになります。
 ここに、第16回社会工学セミナーの報告と第17回の開催案内をお知らせします。
 第16回社会工学セミナーは、アジア地域の橋梁事情について多くの橋梁設計に携わられた伊東講師より、供用後の問題点及び今後の課題について伺いました。
 講演内容につきましては、下記の通りです。
◦平成22年11月29日 18:00
 市ヶ谷校舎 5F マルチメディア教室
◦ 「アジア地域の橋梁事情―主にベトナム、香港、韓国」
 伊東 賢様
 (1981年卒・新日本技研株式会社 取締役設計部長)
◆ 第17回社会工学セミナーの開催案内を以下にお知らせします。
◦平成23年12月7日 18:30
 市ヶ谷校舎 5F マルチメディア教室
① 「大韓民国ソウル清渓川の環境復元」(チョンゲチョン)
 法政大学助手 朴 賛弼(Dr.Park Chanpil)


編集後記

 11月の初旬にホームカミングデーに行きました。工学祭(現在は小金井祭と名称変更)に合わせ、OB・OGも集まろうというものです。小金井校舎は去年まで残っていた実験棟もすでに跡形もなくサラ地となってました。とうとう勉学に勤しんだ懐かしい校舎がなくなり、少々寂しい思いもしました。しかし、今やパソコンやディスプレイ・スクリーンでの授業があたりまえ。わが母校も時代の波に乗り遅れるわけには行きません。市ヶ谷田町校舎が中心とはいえ、小金井に最新鋭の研究室が3つあるとのこと。生まれ変わった小金井校舎、皆さまも一見の価値あると思います。いかがでしょう?
 また、法土会の母体である『工学部同窓会』も新たに「情報科学部」「生命科学部」の2学部を加え『理系 同窓会』としてスタートを切りました。
 少々、サボっていましたがホームページも更新準備中です。こちらもよろしくお願いします。
法土会編集委員 山川宏明(1984卒)