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第11号 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科同窓会報を4回に渡り,毎週火曜日に公開していきます.

 

研究室紹介

美しくふさわしいまちづくり
高見公雄教授

[都市デザイン研究室開設]

 このたび、公募への応募でピカピカの新人教員になり、都市環境デザイン工学科都市デザイン研究室を開設させて頂きました。出身は美術系大学の建築という変わり種ですが、大学院を出てからは全国及び中央の都市計画実務にずっと携わってきました。日本の都市が拡大していく時代、必要なモノを造ることに精一杯で、出来上がってきた都市は必ずしも美しいものではなかった、と思います。表題のうち「美しい」の説明は不要と思いますが、「ふさわしい」とは、気候条件、地勢、歴史・文化などその場所が持つ特性に適合していること、それが結果として個性となって見え、感じるものだと考えています。また都市デザインとは、姿形をデザインすることのみではなく、都市を構成しているさまざまな要素を適切に組み合わせ、あるいは関係づけ、作り上げていく総体を言うものだと考えています。

[都市デザインに関わる大学への期待]

 未だ開設して数カ月のわが研究室ですので、実績もご紹介することも多くはありません。後に現状をご紹介するとして、都市デザインの観点からの大学への期待のようなものを考えてみました。景観法が制定されて後、良好な都市景観の形成についての関心はにわかに高まり、全国の自治体においてその取り組みが拡大しています。このことからは都市デザインの専門家へのニーズは高まったと見ることもできる一方、都市景観に関する検討は産業としてそう規模の大きいものではないと見ることもできます。基本的に行政計画である景観形成計画等は、民間にその検討が委託される場合も多い一方で、厳しい財政状況の中、民間側から見て産業として魅力ある業務である場合とそうでない場合もあります。何より都市デザインといった分野は、なくてはならないものというより、あるとベターといった分野であることから、それのみで成立するものではなく、関連する都市整備の技術等とともにあるものだと考えます。このため、都市デザイン研究室における研究、とりわけ学生が取り組むべき学習分野は、景観・デザインということに過度に特化せず、都市整備の技術全般の習得といったことを目指すべきと考えています。 [研究室の状況、ゼミ生など]  できたばかりの研究室ですが、小金井の卒業研究ゼミには9名の4年生が籍を置き、毎週新米教師と議論を交わしています。

 都市環境デザイン工学科が小金井キャンパスから市ヶ谷田町キャンパスへ展開するという過渡期ですので、都市デザイン研究室も市ヶ谷田町と小金井それぞれあります。できたばかりですので部屋はがらんとしており、特に小金井は今年1年限りですので、年度末までがらんとしたままかもしれません。市ヶ谷田町では後期には3年生の工学ゼミナールが始まり、プレ・ゼミ生のようなことが市ヶ谷で始まるようです。来年度開設が決まったデザイン工学研究科に関しては、入学試験が始まりますが、わが研究室にも応募はあるようで、優秀な学生が入学してくれるものと期待しています。小金井の卒業研究ゼミ生、市ヶ谷のプレ・ゼミ生、来年の大学院生と順次体制が整っていき、デザインばかりではなく、都市整備全般に係わる技術と教養を持ち、その上でデザインや景観は任せておけ、といえる専門家を輩出していきたいと考えています。
 今年の卒業研究は、「都市空間における禁煙」、「多摩ニュータウンの人口問題」、「大規模複合開発による地区の魅力向上要因」「総合設計制度がもたらす都市景観面への影響」など、都市の構成やその要因から、具体的な景観に関するものまで、当研究室で扱おうとするテーマの将来を示唆するようなものとなっています。

[都市デザイン研究室の行方は]

 次第に形を整えつつ、目標とする「美しくふさわしい」まちづくりに関する研究と教育、特にその実現方策を含めた提案を発信していきたいと考えています。また、デザイン工学部として建築学科、システムデザイン学科とも連携を考えていくといった取り組みも念頭にあります。現時点では建築と都市環境、また広く文系学科と連携して継続的に活動されてきた、建築学科の陣内教授率いるエコ地域デザイン研究所のメンバーに加えて頂き、学科横断的な研究を開始しつつあります。都市デザイン研究室の構成員となるゼミ生、大学院生等についても、次第にこのエコ研の活動にも参加してもらおうと考えています。
 以上のようにできたばかりの、右も左も分からない新米教員による「都市デザイン研究室」でありますが、当学部の掲げる「ホリスティック・デザイン」の実現に向け、美しくふさわしいまちづくりについて、真摯に考えていきたいと思います。新任のご挨拶とともに、OB諸氏のご支援、ご鞭撻をお願いするものであります。