第12号 法政大学デザイン工学部都市環境デザイン工学科同窓会報を4回に渡り,毎週火曜日に公開していきます.
研究室紹介
環境問題の解決や気象災害の軽減を目指して
鈴木善晴准教授
今年度より本学都市環境デザイン工学科の教員として着任いたしました鈴木と申します。先日市ヶ谷田町校舎で開催されました法土会主催の社会工学セミナーの際、一部のOB・OGの方々にはすでにご挨拶申し上げましたが、本稿では、新任教員としての自己紹介を兼ねて、我が「水文気象環境研究室」の現状とその活動内容について紹介させていただきます。
ご存知のように、本学科は今年度、小金井キャンパスから市ヶ谷キャンパスへの移設作業がほぼ完了し、腰を据えて教育・研究活動に取り組むための環境がようやく整ったばかりの状況です。特に、都市プランニング系の4研究室と、当研究室を含む環境システム系の2研究室は、今年度から、JR市ヶ谷駅すぐ近くにあるオフィスビル(フォーキャスト市ヶ谷)に入居し、ワンフロアをシェアする形で研究室の活動を始めました。市ヶ谷田町校舎から徒歩10分程度の距離にある不便さやスペース上の制約は多少あるものの、真新しい施設と各々の活動が見渡せる開放感にあふれた環境の中で、研究室の垣根を越えた交流が深まり、学生同士が互いに刺激を受け合うことで、従来以上にゼミ活動が活性化されるのではないかと期待しているところです。
当研究室には、卒業研究のゼミ生として今年度は8名の4年生が所属しています。私自身は、昨年度まで地方の国立大学(宇都宮大学)において8年ほど学生の指導に携わっておりましたが、前任校に限らず、おとなしい学生が増えつつあるという声を度々耳にする昨今の状況の中で、本学の学生には、今なお好奇心旺盛で活発な学生が多いのではないかという良い印象を受けました。しかし、中にはそれが災いして、落ち着きや集中力に欠ける学生も少なからずいるようですので、教員としては、いかにして彼らの分散しがちな関心やエネルギーを研究や勉学に集中させるかが重要になってくるように思います。また、個人差が大きいことも本学学生の特徴かもしれませんので、臨機応変に試行錯誤を続け ながら、学生一人一人が研究室の活動を通じて少しでも成長できるよう手助けをしていければと考えています。
現在は、すでに各学生の研究テーマが決まり、基礎的学習を中心に各々活動を行っているところですが、当研究室が扱う主な研究課題は、都市あるいは地球全体を取り巻く水循環や水資源、大気環境などに関連した諸問題で、基本的には「水文学(すいもんがく)」と呼ばれる学際性の強い学術分野が活動の土台となっています。その研究対象は多岐にわたっており、工学、農学、理学の専門家が集まってそれぞれの立場から様々な調査・研究が行われていますが、私自身は土木工学の出身ですので、社会基盤の整備や防災などとの関連性も念頭に置きながら、これまでは、主に降水現象や大気環境に関連した研究に取り組んできました。
具体的には、「集中豪雨などの降水現象・気象現象の解明とその工学・防災への応用」、「地球温暖化や大気汚染(酸性雨)を中心とした地球環境問題の影響評価」、「水文特性や土地利用を考慮した適切な流域管理の実現」などを主要課題としてきましたが、今後は、こういった研究を継続しながら、一方で、少し現象のスケールを小さくして(あるいは地域を限定して)、本学科が教育・研究の対象とする「都市環境」との関わりが強い問題にも注力していきたいと考えています。
特に、近年は、地球温暖化の進展が懸念される中で、ゲリラ豪雨とも呼ばれる都市における局地的豪雨の増加や、中小都市河川における氾濫被害の増加が大きな社会問題となっています。その原因には、温暖化に伴う気候の亜熱帯化とともに、都市部における人工的な土地被覆の増加と裸地・緑地の減少、人工排熱の増加や高層建築物による大気の流れの変化など、都市特有の様々な問題が複雑に影響していることが指摘されています。こういった問題に対処するためには、それらの影響を定量的に評価したうえで、都市・社会構造やインフラを抜本的に見直すことが不可欠であり、これは、気候変動に対して人類がど のように適応するべきかという問題も含めて、我々土木工学に携わる者が早急に取り組むべき今後の最重要課題と言えるのではないでしょうか。
以上、簡単に当研究室の状況を紹介させていただきましたが、今後も「地球環境問題や気象災害に立ち向かう水文気象環境研究室」として、環境問題の解決や気象災害の軽減に少しでも貢献できるよう精力的な活動を行っていきたいと考えております。本学科のように、同窓会組織がしっかりしていて、活発な活動がなされていることは、教員として非常に心強いことでもあります。まだまだ至らぬ所の多い新任教員ではございますが、OB・OGの皆さまのお力添えをどうぞ宜しくお願い申し上げます。